【中銀チェック】米FOMCは来年末時点での政策金利見通しに注目
12日、13日に米連邦公開市場委員会(FOMC)、14日にイングランド銀行(中央銀行)金融政策会合(MPC)、ECB理事会が行われます。
政策金利はいずれも据え置きが見込まれています。注目は今後に向けての姿勢の変化となります。特に米FOMCは3,6,9,12月のFOMCで示される参加メンバーによる経済見通し(SEP:Summary of Economic Projections)が発表される回にあたっており、メンバーの見通し変化がはっきりとあらわされる可能性があり、注目を集めています。
まずは米FOMCを見てきます。
現状の政策金利は5.25-5.50%。政策金利は3会合連続で据え置かれると見られます。
声明や会見では従来の姿勢が基本的に維持されると見られます。
前回の会合を振り返るとの声明では9月会合で見られた「FOMCは今後入ってくる情報と、金融政策への影響を注視し続ける」との文言が踏襲されました。パウエル議長の会見では「金融引き締めの効果はまだ十分にあらわれていない」、インフレ率を持続的に2%まで低下させるには「まだ長い道のり」との発言がありました。長期金利の上昇が金融環境に与える影響について「ここ数カ月で大幅に引き締まった」との表現がありましたが、今後のデータを総合的に判断する姿勢を改めて示しています。
9月会合で発表された前回のSEPを確認します。
もっとも注目度が高い各メンバーの年末時点での政策金利水準見通しを示すドットプロットは2023年末時点での政策金利について、現水準より0.25%が高い5.50-5.75%が12名、現水準が7名となっていました。2024年末時点については4.25-4.50%から6.00-6.25%まで幅広く分かれており、中央値は5.00-5.25%となっていました。現時点で最後の利上げとなった7月の会合での利上げ打ち止め期待が広がり、来年の上半期の利下げが期待される中で、追加利上げの可能性を示し、また、3月ドットプロットでの2024年末の中央値4.25-4.50%からの上方修正という見通しは、FRBの引き締め姿勢を印象付けるものとなりました。
こうした状況を受けて今回の会合です。
追加利上げ期待についてはほぼなくなっており、7月の利上げで今回の利上げサイクル打ち止めという見通しが広がっています。
FRBの中でも利上げに積極的なタカ派の筆頭格として見られているウォラーFRB理事は11月28日に「インフレ率を(目標の)2%に戻すための政策が現在好位置にあるとの確信を強めている」「数カ月ディスインフレが続き、インフレ率が本当に低下方向に向かっていると確信が持てれば、政策金利を引き下げ始めることが出来る」と発言。追加利上げに消極的な姿勢を示したうえで、利下げ開始の可能性に言及しました。タカ派メンバーですら利下げに言及するという状況に、市場では早期の利下げ期待が広がる展開となっています。
パウエル米FRB議長は1日の講演で、利下げ転換時期の議論は時期尚早と市場の期待にくぎを刺しつつ、政策金利は景気抑制的な領域に深く入ったと発言しました。政策金利の現状について抑制的との印象を強める発言として、こちらもこれまでより慎重という見方が広がりました。
声明や会見については、どこまで今後の利下げを意識させるものになるのかが注目されます。ただ、パウエル議長は1日の講演でも必要とあれば更なる金融引き締めに動く用意があると発言しており、前回同様に追加利上げの可能性を残す形での声明や会見になるとの見方が広がっています。
こうした中、最も注目を集めるのがドットプロットでの2024年末時点での政策金利水準です。現行水準が金利のピークで、市場が期待するように来年上半期での利下げ開始となった場合、前回の中央値5.00-5.25%は少し高い水準です。中央値が下がり来年中複数回の利下げを意識させるものになるかが注目されるところです。来年末時点での物価見通しにも注目が集まります。9月のSEPでの2024年末時点での物価見通しはPCEデフレータ前年比+2.5%、コアデフレータ+2.6%となっていました。この見通しが下方修正されるようだと、利下げ期待が一層強まります。前回は上方修正が見られた経済成長見通しなどにも注意が必要です。
市場が期待する来年上半期での利下げ開始見通しがさらに強まるような内容が示されると、ドル売りが広がる可能性があります。
英中銀は今回総裁会見や四半期報告の無い通常回にあたっており、波乱要素は少ないです。
ECB理事会は、ここにきてビルロワドガロー・フランス中銀総裁やシュナーベルECB理事が追加利上げに否定的な発言を行っており、9月の利上げで利下げサイクル打ち止めとの見方が広がっています。また、ビルロワドガロー総裁は現時点で利下げを検討する用意はないが、来年のある時点で検証することになると、今後の利下げ見通しを示しました。こうした姿勢が声明やラガルド総裁会見でどこまであらわされるかがポイントとなりそうです。
MINKABU PRESS 山岡和雅
みんかぶ(FX)