海外市場ではドル円は、NY勢の参入後も日銀の政策修正期待を背景にした円買いの流れが継続した。3時前に売り圧力が強まると、市場では「エアポケット(買いの空白)のような状態に陥ってしまったようだ」との声も聞かれるなか、一時141.71円まで急落した。ただ、その後は急ピッチで値を下げてきた反動から短時間で144円台まで反発。ユーロドルは、対円を中心にドル売りが進んだ影響を受けた。前日高値の1.0804ドルを上抜けて3時前には1.0818ドルまで上昇。もっとも、その後は1.0790ドル台まで押し戻された。
本日のドル円相場も不安定な値動きになりそうだ。レンジ相場に慣れていたこともあり、昨日は5円を超える値幅を伴ったドル円相場だが、本日も1日を通して乱高下を繰り返しそうだ。また、昨年も12月の日銀政策決定会合を前後に大幅な円高となったことで、同様の動きを先取りした感じもある。
昨年を振り返ってみると、12月17日の日経新聞に「政府、日銀との共同声明見直し論」との報道が流れ、2%の物価上昇目標の達成時期や範囲をより柔軟にし、表現の一部を修正との内容を報じた。市場は瞬間的な円買いとなったが、影響は限られた。しかし、20日の日銀政策決定会合で長短金利操作の運用に関し、長期金利の許容変動幅を従来の「±0.25%程度」から「±0.5%程度」に拡大すると発表すると、一転円が急伸した。ドル円は当日の高値から7円弱の円買い・ドル安が進行した。
この経験があったことで、昨日は同じ轍を踏まないようにとの動きも進み、円の買い戻しが強烈に入った次第だ。ただし、市場が警戒しなくてはならないのは、今年最後の日銀政策決定会合は18-19日ということで、結果発表までまだ10日以上先になっている。日銀のブラックアウト期間は他国の中央銀行と違いわずか2営業日前(詳細は、各金融政策決定会合の2営業日前、会合が2営業日以上にわたる場合には会合開始日の2営業日前)からで、今後も植田日銀総裁をはじめとした日銀関係者から様々な発言が出てくることが予測され、その都度発言内容で乱高下することが予想される。
また、今後の本邦の経済指標もこれまで以上に神経質に市場が反応することが考えられる。本日も10月家計調査、10月毎月勤労統計、7-9月期実質国内総生産(GDP)改定値、10月国際収支速報、11月景気ウオッチャー調査などが発表される。9月の毎月勤労統計では実質賃金が2.4%減少し18カ月連続でマイナスとなった。日銀はこれまで「賃金上昇に伴う2%物価安定目標」としていることで、更に連続してマイナスになるのか。19カ月ぶりにプラスに転じるのかにより市場が敏感に反応する可能性も出てきている。
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