きょうの強い数字は労働市場が依然として非常にタイトなことを示しており、FRBが6月と7月の利上げ後に利上げの一時停止を検討するのではという期待を覆す内容との指摘も聞かれた。米国債利回りも急上昇しており、ドル円を押し上げている。
今週のドル円は2週間ぶりに130円台に上昇。過去3週間に形成されたショートポジションのストップを誘発した模様。市場からは、131.35円の年初来高値を更新すれば、さらに上昇の勢いが増すとの指摘も聞かれる。
ただ、同時にFRBの積極利上げによりリセッション(景気後退)への懸念が強まり、株式市場を始めとしたリスク資産が再び崩れるようであれば、ドル高以上に円高が強まる可能性も指摘されている。
ユーロドルは戻り売りが優勢となった。米雇用統計発表直後には一時1.07ドルちょうど付近まで下げる場面も見られた。しかし、いまのところ1.07ドル台はしっかりと維持されており、底堅さも見せている印象。ECBの利上げ期待が高まる中で、ユーロは以前ほどの脆弱さが見られておらず、21日線の上はしっかりと維持されている。
一方、市場の一部からは、ユーロドルは今後数カ月間、金利と経済の不透明感から不安定な取引に直面し、5月中旬の安値1.0350ドル付近まで下落するリスクがあるとの指摘も出ている。ユーロはここ数週間、ECBの7月利上げの見通しとFRBの利上げ鈍化観測から大きく反発している。しかし、FRBにはまだやるべきことが数多くある一方、EUのロシアに対する石油禁輸措置が成長を損ない、ユーロにとっては逆風となる可能性があるという。
ポンドドルは1.24ドル台に下落。本日の21日線が1.2455ドル付近に来ており、その水準が目先の下値メドとして意識される。市場では依然としてポンドに弱気な見方が多い。ポンドは5月に0.2%上昇したが、今年のパフォーマンスは主要国通貨の中で3番目に悪い。ポンドが直面する最大のリスクは、市場が英中銀の利上げ期待を過度に織り込んでしまっている点だという。
短期金融市場では年内に2.25%もしくは2.50%までの英政策金利の上昇を織り込んでいる。0.25%ポイントずつであれば、年内すべての英中銀金融政策委員会(MPC)で利上げを行うか、その1回は0.50%ポイントの大幅利上げの予想である。ただ、英中銀はすでに過度な引き締めによるリセッション(景気後退)のリスクを警告しており、景気減速を示す証拠も出つつある状況。企業経営者も2020年10月以降で最も悲観的になっており、5分の1以上の企業が今後1年間に投資を削減する予定だという調査結果も出ている。
投資家はいずれ、利上げ期待を縮小せざるを得なくなり、ポンドに売り圧力が強まるという。ポンドドルは1.20ドル割れの可能性を見込んでいるようだ。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美