絶好調のドルだが、ロシアのウクライナ侵攻以来のエネルギー価格上昇がユーロと円を圧迫し、同時に米国のインフレ期待を高めたことがドルを支援し続けている。ここに来て、FRBが引き締めへの積極姿勢を加速させており、インフレの影響を控除した実質利回りの上昇もドル買いを誘発しているようだ。10年物のインフレ連動債は-0.17%とゼロに接近し続けている。
金融政策以外の要素もドルをサポートしている。EUとロシアの関係やフランス大統領選の結果に対する不透明感から、ECBが来週の理事会で引き締め政策に積極的になったとしても、ユーロは慎重な取引を続けるはずだという。また、米国はエネルギーと農産物を自給自足でき、流動的な資産市場と強力な防衛力を持つ国である点も指摘している。
ユーロドルは一時1.0835ドル付近まで下落。3月7日の直近安値1.0805ドル付近を視野に入れた動きが続いている。エネルギー危機の可能性からユーロは打撃を受ける可能性が指摘されている。ロシアへの制裁に起因するユーロ圏のエネルギー危機は、弱い経済成長と高インフレ、またはスタグフレーションを引き起こし、ユーロを下落させる。高インフレはすでに明白だが、エネルギー危機が発生した場合、ユーロ圏経済は痛みを伴う景気後退に直面するという。
中央銀行は通常、利上げによってインフレ期待を低下させるが、そうすると、すでに弱まっている成長にさらなる圧力がかかることにもなる。もし、エネルギー危機が起きれば、欧州経済とユーロにとってはかなり厄介な状況になると指摘している。
ポンドドルも下値模索が続いており、一時2020年11月以来の1.30ドルを割り込む場面が見られた。きょうは対ユーロでも下落しており、ポンドは弱い値動きが見られている。
英国ではの生活費の危機が叫ばれている中で、それを理由に今後の英中銀の利上げ姿勢が緩み、ポンドは今後数カ月、弱含む可能性が指摘されている。英中銀はインフレ抑制よりも成長支援に再び重点を置きつつある可能性が示唆されているという。次回5月の金融政策委員会(MPC)では利上げが実施されるものの、その後はしばらく金利を据え置くと見ているようだ。ただし、それ自体はある程度織り込まれており、それ以上に見通しがハト派的になれば、ポンドは圧迫されるだろうと指摘した。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美