しかし、米国や英国を含むいくつかの国々はロシアへの懐疑的な見方を崩していない。ロシアによるウクライナへの攻撃はきょうも続いており、ウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアは新たな軍を送り込んでいる」とも述べていた。
市場の一部からは、為替市場は地政学リスクを相当程度織り込み、ドルのプレミアムは大して残っていないとの指摘が出ている。それ以上にFRBの積極利上げに市場の関心が再び戻り、金利動向と再度連動すれば、ドルは今後数週間で反発する可能性があるという。
今週は金曜日に3月の米雇用統計の発表が予定されている。数字次第では、短期的に成長リスクは低いとの確信をFRBに与え、積極利上げへの援護射撃になるとの声も聞かれる。非農業部門雇用者数(NFP)は49万人増、失業率は3.7%までの低下が予想されている。失業率のさらなる低下を通じて、労働市場のひっ迫感がさらに明確になり、中立金利に向けて利上げを迅速に実施が必要との認識をFRBに与えるという。FRBは次回5月のFOMCで0.50%の大幅利上げを行う可能性が高いと見ているようだ。
ユーロドルは買い戻しの流れが強まっている。1.1165ドル付近まで上昇しており、21日線を上放れる展開が加速している。きょうはドイツの3月の消費者物価指数(HICP)速報値が発表になり、前年比7.6%と予想を大きく上回った。エネルギー価格の高騰がドイツのインフレ懸念を加速させている。
市場は、ECBが年内に利上げを開始するとの見方を強めている。短期金融市場では2022年にECBが0.63%程度利上げするとの期待を一気に織り込む動きが見られている。ウクライナ危機前のピークを上回る水準。現在の中銀預金金利はマイナス0.50%だが、年内にマイナス金利は解消されることを示唆する動き。
ポンドドルも買い戻しが優勢。一時1.3185ドル付近まで上昇し、本日1.3160ドル近辺に来ている21日線の回復を試す場面が見られている。
ただ、対ユーロでは売りが強まっている。最近の英中銀の利上げ期待の後退はポンドを脆弱にし、ウクライナ危機を取り巻くセンチメント改善の恩恵を十分に受けることができていないとの指摘も聞かれる。対ドルでは買い戻しが見られているものの、対ユーロでは売りが強まっており、3カ月ぶりの安値水準まで下落。さらに下げ幅を拡大する可能性もあるという。しかし、ECBの利上げが英中銀よりも遅れていることや、ウクライナ危機が英国よりもユーロ圏経済に打撃を与えそうなことから、対ユーロでの下げはいずれ落ち着き、夏にかけての買い戻される可能性が高いとも指摘している。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美