ドル買いについては、米固有のニュースというよりも、欧州とアジア経済が直面している困難を反映しているとの指摘も出ている。不動産バブル崩壊や厳しいゼロコロナ政策で中国経済は低迷を余儀なくされ、英欧ではガス危機や生活危機が叫ばれている。
米国でもリセッション(景気後退)への懸念が高まっており、来年の利下げ観測も台頭しているが、景気後退に陥っても他国ほど深刻な状況にはならないとの見方も強い。消去法的にドルに資金が流れているようだが、今後の米経済指標が非常に悪い内容でなければ、ドルは直近高値を固める可能性が高いとの声も聞かれる。
ドル円は本日の上げで21日線を完全に上放れており、来週以降140円を本格的に試しに行くか注目の展開を見せている。
ユーロドルは売りが強まり、1.0035ドル近辺まで下げ幅を拡大。再びパリティ(1.00)割れをうかがう展開となってきた。市場が金利差に着目した動きから、景気への懸念に焦点をシフトする中で、ガス危機が叫ばれているユーロ圏経済にはネガティブな見方が強い。
前日に7月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)の確報値が発表されていたが、前年比8.9%に上昇していた。ただ、市場からは、ピークにはまだ達していないとの指摘も出ている。ガソリン価格は下がり始めているものの、ガスの卸売価格の高騰が続いており、HICPは10月に10%までの上昇が見込まれ、そこでピークを付けるという。そのような中、市場では9月のECB理事会では引き続き、0.50%ポイントの大幅利上げが期待されているようだ。
一方、2023年末までには3.2%まで低下すると見ているようだが、そうした展開となるには、ガスの卸売価格の上昇が止まり、供給の目詰まりが緩和することでモノの価格が落ち着き、サービス価格も需要減少に伴い上昇が緩む必要があるという。
ポンドドルも見切り売りが強まった。一時1.17ドル台まで下落する場面が見られたが、7月中旬に付けた年初来安値が1.1760ドル付近に来ており、試しに行きそうな気配も出ている。
きょうは7月の英小売売上高が発表され、予想外に前月比0.3%の増加となっていた。英小売売上高は販売量ベースの統計。記録的な高インフレで英消費者のセンチメント低下は顕著なものの、記録的な気温上昇が消費を促した模様。ただ、高インフレと生活危機に伴う個人消費低迷という全体像に変化はなく、ポンドドルは今後数週間でさらに下落の可能性が高いとの声も少なくない。実際、東京時間の早朝に発表された8月調査分の英GfK消費者信頼感指数はマイナス44と過去最低となっていた。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美