内訳を見ますと、11月、12月と前月比でマイナス圏、12月に至っては前年比でもマイナス圏となっていたガソリン価格が前月比・前年比ともにプラス圏を回復。住居費は前年比+7.9%と12月の+7.5%から伸びが強まっています。一方、サプライチェーン問題の一服を受けて11月、12月の前年比マイナス圏となっていた中古車は-11.6%とマイナス幅が拡大していました。食料品は前年比+10.1%と高水準ですが、伸び自体は5か月連続で鈍化しています。医療サービスも5か月連続で伸びが鈍化、前年比は+4.1%から+3.0%と鈍化率でみるとかなりの水準になっています。
これまで物価鈍化の要因となってきたガソリンをはじめとするエネルギー価格の低下が落ち着き、その他財価格の伸び鈍化傾向も見られたこと。さらには12月と同じ前年比+14.6%と高水準となった輸送サービスなど、人件費が費用に影響を与えやすい項目での物価の高止まり傾向、物価の流れに対して遅れて変化しがちな住居費の力強い伸び継続などが、市場予想を超える伸びにつながったと見られます。
米CPIの約2週間後に発表される米国のインフレターゲットの対象指標、個人消費支出(PCE)デフレータは、CPI以上に力強い結果となりました。前年比は+5.4%、コア前年比は+4.7%と、市場予想及び上方修正された上での前回値を共に上回る伸びとなっています。PCEデフレータは、CPIに比べて医療サービスが占める割合が高く、CPIでは35%近くを占める住居費が18%ぐらいしかありませんから、CPIに比べると物価鈍化の一服傾向は目立たないのではとの事前予想に反しての反発でした。
このような状況を受けて今回2月のCPIですが、前年比+6.0%、コア前年比+5.5%が見込まれています。ガソリン小売価格(全米全種平均・米エネルギー情報局調査)は1月の1ガロン当たり3.445ドルから3.501ドルに上昇しています。もっとも上昇率は+1.6%と12月から1月にかけての+3.6%から鈍化しています。また2022年は1月から2月にかけてガソリン価格が大きく上昇したため、前年比でみると1月が+0.9%となっているのに対して、2月は-3.0%と低下しています。このガソリン小売価格がそのままCPIに反映されるわけではありませんが、同様の傾向が見られるとすると、CPI全体の前年比上昇が抑えられそうです。コアに関しては住居費の上昇傾向がまだ続くと見られること、堅調な労働市場動向を受けて、人件費に関する費用が大きい輸送サービスなどの項目が高め推移を続けると見込まれることから、コア指数の鈍化は抑えられるという見方です。
3月のFOMCで0.5%利上げを実施するのかどうか。市場でも見通しが分かれる中だけに、米物価統計への注目度がかなり高くなっています。前回同様に市場予想を超える伸びを示した場合、ドル高につながりそうです。予想前後の伸びになると、少し微妙な反応となりそうです。
MINKABU PRESS 山岡和雅