しかし、発表後の市場の反応はドル売りとなりました。平均時給の伸びが前月比+0.3%、前年比+4.6%と、ともに市場予想(前月比+0.4%、前年比+5.0%)を下回り、11月からも伸びが鈍化する結果となったことを嫌気したドル売りが出た形です。
内訳を見ますと、娯楽・接客部門が+6.7万人と堅調さを維持。ヘルスケア・社会福祉部門も+7.44万人と力強い伸びが続いています。景気動向に比較的敏感な小売業が+0.9万人と小幅ながら4カ月ぶりにプラス圏となったほか、雇用の減少が目立っていた運輸・倉庫部門も+0.47万人と5カ月ぶりにプラス圏となりました。ただ、雇用の先行指標といわれるテンポラリーヘルプサービスは5か月連続のマイナス圏となる-3.5万人。減少幅は2021年4月以来の大きさとなっています。
今回の予想は非農業部門雇用者数が+18.5万人、失業率が3.6%となっています。雇用の伸びが鈍化して、失業率が悪化という変化だけを見ると厳しい数字に見えます。ただ、水準的に+18.5万人はそれほど弱い数字ではありません(コロナ前2019年までの5年間の平均が+19.02万人です)。失業率も約50年ぶりの低水準という3.5%が低すぎるといえます。
それだけに予想前後の数字であれば、インパクトは限定的と見られます。ただ、その前の米FOMC次第では、市場に利上げ打ち止めに向けた期待が広がっている可能性があります。この場合は弱めの数字に敏感に反応すると思われますので、予想通りもしくはそれ以下の数字になるとドル売りが進むと見込まれます。
MINKABU PRESS 山岡和雅